この記事でわかること
- 妊娠中のHPV陽性が赤ちゃんや妊娠の経過にどう関わるとされるかがわかります
- 赤ちゃんへの感染は多くが一時的で、陽性が病気に直結しない根拠がわかります
- 妊娠中は見守りが基本となる理由と、産後に確かめることの目安がわかります
「妊婦健診でHPV陽性と言われた」「おなかの赤ちゃんにうつらないか心配」——妊娠中にHPVのことを知らされると、自分のことより先に赤ちゃんのことが気になるものです。お腹に赤ちゃんがいる時期の「陽性」は不安が何倍にもなりますが、知っておくと落ち着ける事実があります。
この記事では、妊娠中のHPV感染が赤ちゃんや妊娠の経過にどう関わるとされているか、妊娠中はどう過ごし、産後に何を確かめればよいかを、研究で報告されている範囲で整理します。
※妊娠中の検査・処置・分娩方法の判断は、必ず妊婦健診を受けている産科の主治医に従ってください。
妊娠中にHPV陽性が分かるのは、めずらしくありません
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性経験のある女性の多くが一生に一度は感染する、ごくありふれたウイルスです。妊娠初期の妊婦健診では子宮頸がん検診(細胞診)が標準的に行われるため、妊娠をきっかけに初めて検査を受け、そこで感染や細胞の変化が見つかることはよくあります。陽性という結果は妊娠のせいでも、何かの罰でもなく、「たまたまこのタイミングで分かった」だけです。
妊娠中はホルモンや免疫の状態が変わるため、HPVが検出されやすく、妊娠中は感染が続きやすい一方で、出産後には検出されなくなる方が多いことが報告されています。妊娠中の陽性は、それだけで「悪いこと」が起きているという意味ではありません。
妊娠中は「慎重に見守る」が基本方針になります
妊娠中にHPV陽性や前がん病変(異形成)が見つかった場合、多くのケースでは、妊娠中はコルポスコピー(拡大鏡の検査)や細胞診で定期的に状態を確認しながら見守り、必要な治療は出産後に行う——という方針が取られます。前がん病変の進行はゆっくりであることが多く、妊娠期間中に急いで治療しなければならないケースは限られているためです。
もちろん方針は状態によって異なるので、産科の主治医の判断がすべてに優先します。疑問や不安は遠慮なく主治医にぶつけてください(妊娠中の検診・検査の受け方は「妊娠中の子宮頸がん検診・HPV検査」で整理しています)。
赤ちゃんにうつることはあるのか
母親から赤ちゃんへのHPVの感染(母子感染)は、主に出産のときに産道で起こるとされています。羊水や胎盤、臍帯血からHPVが検出されたという報告もあり、妊娠中に感染が及ぶ可能性も指摘されています。
ただし、次の点が知られています。
- 赤ちゃんにHPVが検出されても、多くは一時的で、時間とともに検出されなくなると報告されています
- 帝王切開のほうが経腟分娩より感染が少ないとする報告はありますが、HPV陽性であることだけを理由に分娩方法を変えることは一般に行われていません。分娩方法は、産科の主治医が妊娠の経過全体から判断します
- 赤ちゃんの喉に腫瘍ができる「若年性再発性呼吸器乳頭腫症」という病気はHPVが関わるまれな病気ですが、関わるのは主に6型・11型で、子宮頸がんに関わる高リスク型とは別の型です
つまり、「母親がHPV陽性=赤ちゃんに病気が起きる」という関係ではありません。
妊娠の経過への影響は?
母親のHPV感染と、早産や前期破水(出産前に破水すること)との関連を調べた研究は複数あります。2020年に発表された系統的レビューでは、HPVに感染している妊婦のほうが早産や前期破水がやや多い傾向が報告されています。
一方で、これらは観察研究をまとめたもので、研究の質にばらつきがあり、年齢以外の要因(喫煙、ほかの感染症、社会的な背景など)が十分に考慮されていないことを、著者自身が限界として挙げています。2022年のレビューも「データは一貫しておらず、HPVが原因と確立されたわけではない」と結論しています。
HPVに感染している妊婦の大多数は、問題なく妊娠を継続し、出産しています。関連を示す報告があることと、ご自身の妊娠に何かが起きることは、別の話です。
妊娠中はどう過ごせばいい?
妊娠中のあなたにできる最善のことは、シンプルです。指示された健診・検査の予定を守って通い続けること。それだけで、あなたと赤ちゃんは医療の見守りの中にいます。ネットの体験談を深夜に読み漁るより、次の健診で主治医に質問リストを渡す方が、何倍も確かな安心につながります。
- 気になることは、すべて妊婦健診で相談します。妊娠中の窓口は産科の主治医に一本化するのが安全です
- 細胞診で「要精密検査」と言われた場合も、妊娠中は経過観察とし、治療は原則として出産後に行うのが一般的です
- 自宅でできる郵送HPV検査(自己採取)は、妊娠中・妊娠の可能性がある方は対象外です。Day360も同様です
- パートナーを責める材料にはなりません。HPVは感染してから何年も経って見つかることがあり、「いつ・誰から」は検査では分かりません
産後は、ご自身のHPVの状態を改めて確かめましょう
出産後は免疫の状態が戻り、妊娠中に検出されたHPVが消えている方も多いと報告されています。産後の検診の再開時期は、産科の主治医と相談して決めてください(目安は「産後・授乳中の子宮頸がん検診(再開の目安)」で整理しています)。
産後の生活が落ち着いてから、ご自身のHPVの状態を改めて確かめる方法として、医療機関での検診のほか、自宅でできる自己採取のHPV検査があります。授乳中の扱いや採取の注意点は、各サービスの案内をご確認ください。
まとめ
- 妊娠中にHPV陽性が分かることはめずらしくなく、妊娠中は検出されやすい一方、産後に消える方も多いと報告されています
- 妊娠中に前がん病変が見つかっても、多くは見守りながら経過を確認し、治療は原則として出産後に行います
- 赤ちゃんへの感染は起こりえますが多くは一時的で、「母親が陽性=赤ちゃんに病気」という関係ではありません
- 早産などとの関連を示す報告はありますが、原因として確立されたものではなく、大多数の方は問題なく出産しています
- 妊娠中の窓口は妊婦健診に一本化し、指示された予定を守って通い続けること。郵送の自己採取検査は妊娠中は対象外です
- 産後に落ち着いたら、ご自身のHPVの状態を改めて確かめることをおすすめします
Day360について
Day360は、自宅で採取して郵送するHPV検査サービスです。検査は臨床検査の専門機関で行い、リアルタイムPCR法で高リスク型HPVの感染の有無を調べます。公的な子宮頸がん検診の代わりになるものではなく、検診を受けるきっかけや、検診と検診のあいだの備えとしてご利用いただけます。なお、妊娠中・妊娠の可能性のある方はご利用いただけません。産後の利用時期や体調については、かかりつけの産科にご相談ください。
参考にした公的情報・出典
- Niyibizi J, et al. Association Between Maternal Human Papillomavirus Infection and Adverse Pregnancy Outcomes: Systematic Review and Meta-Analysis. J Infect Dis. 2020;221(12):1925-1937. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7289546
- Niyibizi J, et al. The association between adverse pregnancy outcomes and maternal human papillomavirus infection: a systematic review protocol. Syst Rev. 2017;6:53. https://systematicreviewsjournal.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s13643-017-0443-5
- Maternal HPV Infection and the Estimated Risks for Adverse Pregnancy Outcomes—A Systematic Review. Diagnostics. 2022;12(6):1471. https://www.mdpi.com/2075-4418/12/6/1471
- Medeiros LR, et al. Vertical transmission of the human papillomavirus: a systematic quantitative review. Cad Saude Publica. 2005;21(4):1006-1015. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16021238/
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん」 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
- 日本産科婦人科学会「子宮頸がん」 https://www.jsog.or.jp/citizen/5713/
- 厚生労働省「妊婦健康診査についてのお知らせ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/ninpu-01.html
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。研究で報告されている関連は集団での傾向であり、個々の妊娠の経過を予測するものではありません。妊娠中の検査・治療・分娩方法の判断は、必ず産科の主治医に従ってください。
症状がある方へ
妊娠中の出血・腹痛・破水かもしれないと感じる症状がある場合は、この記事の内容にかかわらず、すぐにかかりつけの産科に連絡してください。

